よこまち・だいもん見聞録第1回「西念寺の歴史をひもとく」
- yokomachipost
- 2020年4月22日
- 読了時間: 4分

話し手:外川忍さん
日時 :2019年11月17日(日) 13時〜14時
会場 :よこまちポスト
横町・大門エリアで活躍する方々に、ご自身の活動やまちとの関わりについてお話を伺う新企画「よこまち・だいもん見聞録」。記念すべき第1回目は、まちの歴史にひときわ詳しいと評判の外川忍さんをお招きしました。第1回のタイトルは「西念寺の歴史をひもとく」。様々な資料を重ね合わせ西念寺の歴史に迫る中で、上吉田、さらには富士吉田市全体の構造が見えてきました。
− まちの歴史に詳しくなったきっかけ
外川さんは上吉田のご出身。一時大阪に出られていましたが、5〜6年前に上吉田に戻り、現在は横町で金物店を営んでいます。プロフィールを聞く限りでは「歴史」との大きな繋がりは見えませんが、なぜそんなにもまちの歴史に詳しいのでしょうか。
外川さんは小学生の頃から、家族を代表して地域の祭事に出席することが多かったそうです。そこで出会った地域の方々に祭事の歴史的な意味づけなどについてお話を聞く中で、自らも歴史に興味をもち、資料などを通してまちの歴史について理解を深めていったそうです。
− 外川さんにとって歴史とは
学術的に扱われる歴史は、古文書などの物的な証拠をもとに語られることが主です。しかし、世の中には聞き間違いなどにより本来とは異なる形で伝承された文化が多く存在し、そのような文化の変化を含めて”歴史”であると、外川さんは言います。 西念寺や富士吉田に関する史料は、武田氏と北条氏の戦により焼失してしまったものが多く、それらに関する歴史的な証拠が少ないのですが、今回は、様々な文献を通して外川さんが解釈した歴史についてお話を伺いました。
− 西念寺のはじまり
西念寺は奈良時代、行基が富士山に庵を結んだことが起源であると言われています。
飛鳥時代以降の律令国家の下で、時代の主役は一部の上流階級の人々でした。しかし、平安時代に荘園制度が確立した後、徐々に庶民が時代の主役に成り上がっていきます。そんな時代の流れとともに、宗教のターゲットも変化していきました。庶民に向けた宗教の代表的なものが、一遍のはじめた時宗です。その弟子の真教上人が諸国遊行の途中で西念寺に留まり、鎌倉時代に西念寺は改宗して時宗の道場となりました。
− 謎に包まれた西念寺の移転
妙法寺に残された史料によれば、1533年に上吉田一帯が火事により焼失したということですが、その時に西念寺は被害を受けなかったということがわかっています。つまり、当時の西念寺は上吉田以外の地に位置していたのです。その後元亀元年(1570年)に1度焼失し、現在の地に移転したということは記録がありますが、やはり西念寺があった場所についての記述はありません。
外川さんの推測によれば、西念寺はもともと、現在の富士吉田市の中心に位置しており、市全体に対して非常に大きな影響力を与えていたのではないかということです。 その西念寺が焼失してしまったため、安全な地にこれを再建し、西念寺を拠り所として周辺のまちを形成したのではないでしょうか。 少々思い切ったことを言えば、西念寺が焼失してしまったことがきっかけで上吉田というまちができたと言えるのかもしれません。

− 西念寺、浅間神社、御師のまちから成る上吉田の構造
1838年の西念寺境内の様子を表した絵図を見ると、現在よりもかなり大きな敷地を所有していたことがわかります。間堀川を渡る橋の付近には「ここより西念寺境内」と書かれた石柱または木柱が設置されていたということです。 当時、西念寺の敷地を農地として様々な人に貸していましたが、次第にそれらが個人の敷地となっていきます。さらに、明治維新の後、政府が所有であることを証明できない民間の土地を公有地とする命令を下したことから、西念寺の敷地は縮小していきました。
土地のルーツをたどると、上吉田は大きく「浅間神社境内」「西念寺境内」「御師のまち」の3つから構成されることがわかります。 国道138号線は見方を変えると、浅間神社と西念寺をわかつ道であると言え、国道138号拡幅に伴うまちづくりを考えて行く上でも、この視点が重要になりそうです。

− 最後に、国道拡幅に伴うまちづくりについての一言
重要なのは国道138号の拡幅や中央分離帯の設置によって、北側のまちと南側のまちが分断されないようにすることだということです。利便性を担保するための市道の設置などについては議論されているが、「精神的に」分断されないことが重要です。横町・大門エリアの住民は、浅間神社と西念寺に守られて暮らしているとのこ。住民の心の拠り所としての神社、寺を中心としたまちづくりを進めていってもらいたいというご意見をいただきました。
会場には西念寺の住職さんや地域の方々がいらっしゃり、特に後半では話し手の外川さんとの議論が盛り上がりました。上吉田に住んでいる方でも知らない内容が多く、楽しかったという意見もいただきました。第1回目ということで手探りで進めた企画でしたが、今回の反省を活かしつつ、これからも定期的に開催していきます。
お話しいただいた外川さん、会場にいらっしゃった地域の方々、ありがとうございました。
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